第四回|気持ちいい/かっこいい。そういうことが豊かさに繋がる
菜衣子:この企画、第一回は建築家の竹内昌義さんと森みわさんにパッシブハウスの話をしていただきました。山形に、森みわさんとみかんぐみの竹内昌義さんが東北芸術工科大学と建てた家がたくさんあって。外がマイナス7℃で雪がすごい日に、夜10時に暖房を切った家へ翌朝7時に行ったらたった3℃しか温度が下がってなかったという衝撃体験をしました。
後藤:へえーー、すごいそれ。『パッシブハウス』?
菜衣子:エコハウスなんで、パッシブハウス(1)ほど断熱は効いてないんです。
(1) パッシブハウス(Passive house):ドイツパッシブハウス研究所が規定する性能基準を満たす認定住宅のこと。暖房負荷(暖房シーズンに室内に送り込む必要のある熱の総量)を例に見ると、次世代省エネルギー基準が100〜150kWh/㎡。「パッシブハウス」の基準が15kWh/㎡と、とても厳しい基準をクリアしないとパッシブハウスと認定されない。パッシブハウスについては前回の特集でもとりあげました。 http://offgrid.bouken.life/feature/passivehouse01/
後藤:パッシブハウスのほうが断熱は効く?
ジョニー:そう、パッシブハウスのほうが基準が厳しいです。家を暖めたり冷やしたりするのに効率がいい、ようするに「家の燃費」がメチャクチャいいってことです。
後藤:なるほど。
菜衣子:「山形エコハウス」は厳密にはパッシブハウスではないです。それでも夜間通して3℃しか下らない! 暖房を切っているのに、ですよ。エコハウスと言えば「エネルギーがどれだけカットできるか」みたいなアピールばかりを耳にしていたので、ほんとのところそんなに興味なかった(笑)でも実際に体験してみたらこの体感温度にわたしたちはギョッとして。「なんだこれ超快適な家じゃん!」って感動した。だから「エコしよう!」とか「エネルギーを節約しよう!」とかじゃなくて“朝、超快適”っていうところに「萌え」ました(笑)。だからそういう「萌えるもの」をこの『OFF-GRID LIFE』ではコレクションしていこうと思っているんです。
後藤:こっちのほうがカッコイイじゃんてことだよね。
ジョニー:おもしろいじゃん、とか。
菜衣子:もっと「かっこいいじゃん!」「快適じゃん!」という部分を推していきたいです。東電が「スイッチひとつで!」って言ったのと違うバージョンというか、もうちょっと未来の暮らしが見えてくるようなもの。そういう事例がもう本当はいっぱいあるし。自分たちはそれをちゃんと掘り出して、広めていかなきゃいけない世代なのかな、と。これからどういった家を建てるのか、とか、どういうふうに音を聴くんだ、とかそういったこと。
後藤:うん、そうだよね。ひいては、何が豊かか、ということに繋がるよね。
菜衣子:そうそうそうそう。
後藤:何が豊かであるかの物差しをみんなで変えないとなんだよね。
菜衣子:そう。でもその「物差しを変える」というとまだまだ「ガマン」「辛抱」というような話に聞こえるような気がしています。
ジョニー:「エコ」のイメージが、ね。非常にタフでストイック、そして地味…黒板五郎(ドラマ『北の国から』の主人公である五郎さん)的な…(笑) 21世紀だから単なる黒板五郎はそろそろ卒業したい、ね…
菜衣子:そう。その概念も変えたいな、と思っていて。
後藤:それはなんかさ、「俺たちが希望をもって何か新しい産業を獲得できるかもしれない」って考えたほうがいいよね。
ジョニー:そうなんですよね!
後藤:だってね、また今あるものに新たにお金をつぎ込んでいくなんて、いま儲かっている人が引き続き儲かっていくだけだものね。
そうではなく、新しい仕事が増えることって、ものすごく夢のあることじゃない? 俺は、再生可能エネルギーは、そういう方向でプロモーションを展開すればいいのにって、思う。
つづく