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自分の心に忠実に生きてきた、誰も知らない長嶋りかこの話(3) / 暮らしかた冒険家 presents OFF-GRID LIFE

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crosstalk
2015.05.09

暮らしかた冒険家 meets

volume 9長嶋りかこ × 暮らしかた冒険家

  • Text葛原信太郎
  • Photo伊藤 菜衣子, 池田 秀紀

自分の心に忠実に生きてきた、誰も知らない長嶋りかこの話(3)

今回、暮らしかた冒険家が訪れたのは、日本を代表するグラフィックデザイナーの長嶋りかこさん。えぇ?なにか今までの記事と比べると一気に華やかというか、ちょっと方向が違うというか、、、なんてドキドキしている人はご安心ください。彼女は根っからのオフグリッドな人だから。そしてナイーブで、でも、自分の心の声に忠実に生きてきて、今の道を選びとってきた人。そしてまだその旅の途中にいる(たぶん)誰も知らない長嶋りかこさんのこと。  

アートは答えなくていいのか?デザイナーは問わなくていいのか?

長嶋 こないだ仕事で、福島に行ってきたの。原発には行ってないんだけど、作業員の人たちが作業前と作業後に集まるJ-ビレッジとか、富岡町とか大熊・双葉町とか、原発周辺の街を見てきたんだ。

菜衣子 どんな仕事なの?

長嶋 現代美術家の宮島達男さんが、震災を機に六本木ヒルズにある作品「カウンター・ヴォイド」のライトを鎮魂の意を込めて消したのね。それを再点灯して欲しいって意見が来てるんだけど、宮島さんとしてはただスイッチを入れるだけでは、震災前の社会の価値観と変わらない、だから何ができるか考えようってことになったの。しかもそれを宮島さんが考えるんじゃなくて、もっと開かれたカタチで再点灯の仕方を考えたほうが、3.11以降のアートのあり方として、マッチョではない一つの方向としてあるんじゃないかと。で、再点灯のコンセプトやプロセスを考えて欲しいと依頼されて。いいアートって本当に人生がかわるくらいの問いかけと深い衝撃を受け取れるから、アートはそういう役割のものだと思う。でもアートって、乱暴に言っちゃえば問いかけで終わっちゃうでしょう?せっかくだから問いかけだけでなく、答えも自分たちで出せる場を作りたいなと思っていて。それもあって、5年めに突入した福島を、社会学者の開沼博さんのナビゲートで見てきたの。彼は福島のこれまでの現実をずっと見つめてきた人で、福島の問題が多様化していることを、肌で感じながら、答えをひたすら文字にしてカタチにしている人。

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菜衣子 私たちも、それはずっと思ってて。札幌国際芸術祭ではなぜかアーティストとして招集されて、札幌で暮らすことになったんだけど。そもそも「暮らしかた冒険家」の手法は、問いかけというよりは、問題をどう解決するか、というプロセスそのものを公開しながら、答えに近づく、みたいなのがいつものやりかたというか、暮らしかたというか、あり方で。アーティストという土俵に乗せてもらったときには、どう立ち振る舞うか、みたいのはものすごくリサーチしたなぁ。結局、いつも通りの「行き当たりバッチリ」の暮らしをしてただけだけど。

長嶋 例えばものすごく声の小さい届かなそうな問いを投げかけて、それで終わりっていうアートを見ると、なんか仕事してない気がしちゃう。

菜衣子 問題提起して走り去っていくのかよー!みたいな。露出狂みたいだなって。バッ!うわー!!!って(笑)

長嶋 そうそう(笑) アートは問いで、デザインは答えなんてよく言うけど、アートが問いだけで終わらなくてもいいなと思うし、逆にデザイナーは社会に対して問いの姿勢を持たなくていいのかっていうと、絶対そうじゃないと思うの。デザイナーが問いを持たず無邪気に仕事すると、答えだけを能天気にどんどん出してしまう。それは、ちょっと無責任な側面もあるんじゃないかなぁと。

菜衣子 ただの拡声器になちゃってるよね。

長嶋 ホントそう。

菜衣子 そこに倫理観のフィルターがあるべきだと思う。

長嶋 話飛ぶけど、私ね、広川泰士さんの「sonomama sonomama」って写真集が好きで。ギャルソンとかヨウジとかを農村のおじいちゃんおばあちゃんに着せて撮ってるの。今まで暖をとるとか動きやすいとか肌を隠すとか機能的な視点でしか服を着ていない人々に、全く逆の、装飾でしかない洋服を着せるの。すると、ものすごく似合ってるんだよね。そこで見えてくるのが、その土地で慎ましく生きてきたであろう彼らの生き様と人間像。でもぐるっとまわって、彼らにも似合う服を作ったギャルソンってすごくないか?って、ぐるぐるするんだけど。でも、まず逆説的な設定をした時点で見えてくる問いがちゃんとあるでしょう?

菜衣子 ファッション写真ってリアリティないもんね。人間離れしたモデルさんだったりもするし。

長嶋 うん。でもこれは服ってものの存在を問うてる。

菜衣子 だから Human_Natureをやってるんだね。しかも、SS/AWっていうファッション業界の常識をひっくり返したタイトルで。(Spring Summer/ Autumn Winterの略。通常各ブランドは春夏、秋冬の2つのコレクションを発表するが、長嶋さんは2013年にすべてのシーズンに着られる服を提案しました。)

BETWEEN SS/AW AND SEASONS Human_Nature 2013

――HUMAN_NATUREとは、”人と自然の間”をテーマに、都市の日常の中で様々な角度で「自然」を意識できるものを提案する長嶋さんの活動。プロダクトや洋服などアウトプットは様々。2013年に発表したこの洋服は、季節を超え、時が経っても形を変えて着ることで、ゆっくりと洋服と季節の流れを楽しむことができるようにというメッセージが込められ、ちょっと不思議で大胆だけど、長嶋さん自身が思うことを正直に表現していることが伝わってくる。

長嶋 ファッション関連のお仕事が割と多かったから、この業界自体は遠巻きに見ていたんだけど、品質のいいものやクリエイションの尊いものはさておき、それにしてもこんなにシーズンごとに大量に作って激安で売って、価値を下げまくって、何かがおかしいぞと。だって大量に捨てられる服もあわけで。ただ流通させるためだけに作っている側面が気になってきちゃって。だってさ、私の実家のおばあちゃんは、同じ服も何年も着て、袖が変になったら半袖にしちゃうし、自分で必要に応じてカスタムして作っちゃう。昔の人はみんな当たり前のようにそうしてたんだろうけど。
冒頭のほうで、田舎と都市、感覚が全然違うから、その度に毎回チューニングを合わせないと生活がしづらいって言ったじゃない?だからどっちかに合わせるんじゃなくて、その「間」って自分で作れないだろうかって思うようになって、それがHUMAN_NATUREを始めたきっかけだったんだ。

よく喩え話でいうんだけど、今はフライパンが目玉焼き用、卵焼き用、ホットケーキ用って何種類もあるでしょう。でもさ、ひとつの鍋さえあれば全部の料理に対応できる”腕”を持ってることの方が価値あるよね。きめ細かくオプションの種類が増えていくと、人が工夫する能力とか、本来持っている力が衰えていく。そういう、陰となりすっかり見えなくなってしまっている大事なことに、光を当てて見えるようにする様なことをしたいんだ。HUMAN_NATUREも、福島のプロジェクトも、札幌国際芸術祭も、今はまだ点だけど、点をどんどんつないでいって、線になって、面になった時、私がしたかったことがくっきりみえてくるんじゃないかなって思う。

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――子どもの頃からオフグリッドだった長嶋さんは、東京の広告業界という真逆の世界の中で、自分の心に忠実に生きている。まだ答えははっきりとしたカタチになってないけれど、きっとこれはオフグリッドな旅、まっただ中。これから先、長嶋さんが表現したいことの輪郭がもっとはっきりしてくるのだろうなと、楽しみになりました。自分の心に忠実に、これじゃない感に正直に、自分らしい生き方にたどり着く。少し遠回りのように思えますが、もっとも確実に近づいていくのかもしれません。

あなたが、今の生活に違和感を感じているとしたら思いっきてオフグリッドしてみるのはどうでしょうか?新しい選択肢って意外と無限にあるものです。その先に自分らしい生き方があることを信じて、粘り強く。

そんな長嶋りかこさんの手がけるHUMAN_NATUREが伊勢丹で見られます。

PRISTINE×Rikako Nagashima
“Slow cloth”


会期:5月11日(月)~5月19日(火)
会場:伊勢丹新宿店本館5階=センターパーク/ザ・ステージ#5
オーガニックコットン、made in japanにこだわった
プリスティンとのコラボレーションで、Human_Natureを販売します。
テーマは”Slow cloth”。草木染めによる色展開もあります。