第六回|どう響かせるか、どう伝えるか 〜伝え方の話〜(2)
後藤:あとさ、どう考えても社会活動とか政治的なことって、響かなかったら意味がない。よし俺こんなことやった!っていう自己満足はどうでもよくて、自分がまったく評価されなかったとしても、こと社会に関してはいい方向に進んでほしいわけ。なぜなら、僕が暮らしている「いま」が、そのほうが絶対に気持ちいいから。たとえば「原発の廃炉がうまくいきました」ってニュースを新聞で読んだら、僕が気持ちいいからさ、絶対。
ジョニー:なんか後藤さんは、すごく広告的な、っていうか、デザイナー的な考えを持っていらっしゃるなあと感じます。
後藤:そうかな(笑)。でも広告の人たちがもっとがんばったら、世の中ってずっと良くなるのではとも思ってますよ(笑)。
ジョニー:それはめちゃくちゃわかります。僕自身、自分でいいと思ってもいないものを広告しなきゃいけないことに疑問を感じて…でもそれって単純に、広告する“モノ”自体がよくないってことであって。一方で、広告的なアプローチ自体は、もっと必要だと思うんです、必要としているところには。伝わらなくちゃ、意味がないから。たとえば、ソーラー発電もそうだし、オフグリッドな暮らしかたも。でも、実際に大量にお金や人材が投入されるのはそういうところではなく…
後藤:だからそういうことだと思う。ああいう入り口みたいなところの…人々の選択に対して影響を与える仕事を担っている人たちの意識が何歩でも上がったら、絶対いい国になる!
菜衣子:それはもう絶対!(笑)
後藤:それだけでも全然違うと思う。意志と誇りを持てば、ね。
ジョニー:結局、世の中すべて、誰かの仕事の積み重ねですからね
後藤:そうなんだよね!
菜衣子:今回の札幌国際芸術祭で教授が掲げたテーマが「社会彫刻」。ひとりひとりが社会を作ることにどう関わるかってことなんですけど。みんなが「作り手になっていく」ことを仕掛けとしてセットしたいなって。それを考えるのがすごくおもしろいんです。
後藤:そういうイメージはすごくよくわかる。本当にそうなったらいいなと思う。
菜衣子:「社会彫刻」を提唱したヨーゼフ・ボイス(2)の本なんかも読んで、「ああ教授がイメージしているのはこれか」ってすごくよくわかって。そして「なぜ暮らしかたがアートなのか」ってこともわかったり。
で、いまうちをエコハウスに改修するために、どんどんいろんなことをしています。みかんぐみの竹内昌義さんが監修しているのですが、まず部屋の気密性を上げるまえにケミカルなものを全部取れっていうんで壁紙をすべてはがして います。それを近所の子どもたちとか芸術祭を見に来た人たちがみんなでやってるんですよ。で、それで子どもたちが家に帰ると壁紙はがしたがる(3)って参加者の人たちが言ってましたよ、と教授に話したら「やったー!」って(笑)。
(2)ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys、1921-1986):ドイツの現代美術家・彫刻家・教育者・社会活動家。「社会彫刻」=市民が社会を形作っていくことそのものも芸術だという概念を提唱した。暮らしかた冒険家が参加する札幌国際芸術祭2014では「社会彫刻」もひとつのテーマである。 http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/
(3)シックハウス対策:壁紙や建材、家具などに含まれているホルムアルデヒドなどの科学物質はシックハウス症候群を引き起こすとされ問題視されています。2003年よりシックハウス対策として換気システムが義務付けられるように。またそもそもの有害物質の除去も、家の気密化をする上では有効。
つづく