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第一回|ドイツで出会った、暮らしの質を上げるエコ / 暮らしかた冒険家 presents OFF-GRID LIFE

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crosstalk
2014.08.06

暮らしかた冒険家 meets

volume 1竹内昌義×森みわ 「ガマンしない」に貪欲な家

  • Text石神 夏希
  • Photo池田 秀紀

第一回|ドイツで出会った、暮らしの質を上げるエコ

オフグリッドの暮らしに挑戦している「暮らしかた冒険家」が、『図解 エコハウス』の著書である建築家の竹内昌義さん(みかんぐみ)と森みわさん(KEY ARCHITECTS/一般社団法人パッシブハウス・ジャパン)を訪ね、エコハウスやパッシブハウスについてお話を伺います。 総電力の34%を占めると言われる住宅の冷暖房。家を見つめ直すことで、見えてくる、エネルギーのこと、社会のこと、暮らしのこと。さまざまな視点から、「ガマンしない」に貪欲な家のヒントを探します。
全八回に渡る「「ガマンしない」に貪欲な家」をめぐる対談。第一回は、森みわさんが語るドイツから学んだ価値観の転換。そして環境の問題意識と建築が重なり合ったときに生まれた考え方「パッシブハウス」とは。

2014年夏に初開催される札幌国際芸術祭で「ないものねだりから、あることみっけの暮らしかた」そのものを「作品」として出展している暮らしかた冒険家。その「冒険」のひとつとしてオフグリッドの暮らしに挑戦している彼らが、『図解 エコハウス』の著書である建築家の竹内昌義さん(みかんぐみ)と森みわさん(KEY ARCHITECTS/一般社団法人パッシブハウス・ジャパン)を訪ねました。

暮らしかた冒険家・伊藤菜衣子(以下菜衣子)は、以前からエコやエネルギーといった話が「あんまり萌えない」ことを残念に思っていた、といいます。

菜衣子:でもこの前、お二人のつくった「山形エコハウス」に初めておじゃましたとき、すごく雪が降った日だったのに、夜寝て朝起きるまでの間に3度しか室温が下がっていないという快適さに感動したんです。なんだこれは?!って。

山形エコハウス(2010年)。「21世紀環境共生型モデル住宅整備事業」として建設されたもの

山形エコハウス(2010年)。「21世紀環境共生型モデル住宅整備事業」として建設されたもの

菜衣子:他にも、たとえばサウンド・エンジニアの友だちから「太陽光発電(直流電力)の方が音の抜けがいい」と教えてもらったり。改めて、エネルギーって節約するものじゃなくて、暮らしを豊かにする選択肢なんだなと思ったんです。

生活者としてDIYでエコハウスをつくっている暮らしかた冒険家から、日本のエコハウス/パッシブハウスの最先端を走る二人の建築家へ。いま一番気になるエネルギーと家のこと、そしてこれからの暮らしのこと。ぎゅうっと詰まったロング・インタビューです。

ドイツで出会った、暮らしの質を上げるエコ

もともとデザインを志し、日本の大学で建築を学んでいた森さん。また環境問題にも強い関心を持っていましたが、建築とのつながりはまだ見出だせずにいました。そんな森さんの転機となったのがドイツ留学。

森:ドイツではまず、社会が成熟していて人々の暮らしが豊かなことに驚きました。お金ではなく、時間の使い方など生活全体が豊か。なおかつ、自分たちだけが豊かでもしょうがない、地球の裏側にいる人たちのことまで考えようという意識があって、多少値段が高くても環境負荷の低いものを選ぶという姿勢が浸透していました。

ところが当時の日本の「エコ」といえば、“国際社会に肩を並べるためにはCO2を削減しなければ”といった手段や、ブームに近い様相。本来の目的や、その先に実現したい世界像が見えるとは言いがたい状況でした。

森:動機の不純な、偽善のようなエコばかり叫ばれていて。それに日本の人はみんな忙しすぎて、目の前のことでいっぱいいっぱい。日本社会で環境のことを語るのなら「豊かさとは何か」という価値観の転換が、まずは必要だと思ったんです。

こうした問題意識と建築とが重なり合っていたのが、「パッシブハウス」でした。

それは、従来の住宅に高性能な設備を足すという日本的なエコではなく、住宅の躯体(外皮)の性能を上げることによってエネルギー依存率を下げるという暮らし方の提案。ごくシンプルにいえば、家の断熱性・気密性を高めて熱を外に逃さず、太陽の恵みを受ければ暖房に頼らなくても暖かい、という考え方です。

鎌倉パッシブハウス(2009年)。日本で初めてパッシブハウスの認定を受けた第1号。日本の温暖な気候でも、高断熱が夏も冬も省エネをもたらすことが実証された(写真:KEY ARCHITECTS)

鎌倉パッシブハウス(2009年)。日本で初めてパッシブハウスの認定を受けた第1号。日本の温暖な気候でも、高断熱が夏も冬も省エネをもたらすことが実証された(写真:KEY ARCHITECTS)

森:太陽光発電は、自分で電気をつくれても、それ自体が暮らしの質を高めるような手段ではありません。あくまで発電所か、金融商品。それでは地球全体のことを考える心のゆとりは生まれないと思いました。

では、高気密・高断熱の家がもたらす暮らしの質の向上とは、たとえばどういうことなのでしょうか?

森:私の自宅では、朝、薪ストーブを消して出かけて、夕方帰ってきても室温が1℃くらいしか下がっていません。再度焚く必要がないほど暖かいんです。3人家族ですが、ガス代も電気代も毎月数千円しかかかりません。

一方、古民家など躯体の性能が低いまま、たとえば薪ストーブを入れてしまうと、体の前側は熱いけれど背中は寒かったり、火が消えた瞬間、居ても立ってもいられないくらい寒くなったりと、十分な暖房効果が得られません。森さんは「現代人が住めば、古民家の方がエネルギーを使う」と指摘します。逆にいえば躯体の性能を上げないと、なるべくエネルギーを使わないよう暮らすことは即、「がまん」になってしまうのですね。

森:私たちの計算では、躯体の性能を上げることは、たとえば太陽光発電の3kWh分に相当したりします。快適に過ごせて、自分たちにもメリットがある。あとは同じ予算をどこに配分するほうがいいか、消費者自身が選べばいい。きちんとご説明すると、分かってくださる方のほうが多いです。

つづく