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「DIYオフグリッドは、自分でつくる未来」〈前篇〉 / 暮らしかた冒険家 presents OFF-GRID LIFE

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crosstalk
2015.04.23

暮らしかた冒険家 meets

volume 8竹内昌義×鈴木菜央×暮らしかた冒険家

  • Text石神 夏希
  • Photo伊藤 菜衣子

「DIYオフグリッドは、自分でつくる未来」〈前篇〉

これまで約1年間に渡り、「わるい“つながり”を減らして、よい“つながり”を増やしていく」人や暮らしを紹介してきたOFF-GRID LIFE。 今回は、東京・虎ノ門にあるリトルトーキョーで。建築家の竹内昌義さん(みかんぐみ)、green.jp編集長であり『わたしたち電力』の言い出しっぺである鈴木菜央さん、そしてOFF-GRID LIFEのプロデューサーである暮らしかた冒険家の対談です。 ちなみに竹内さんと菜央さんは、2015年2月に開催された「リノベーションスクール@北九州」セルフリノベーションコースで、ユニットマスター(講師)としてタッグを組んだ仲。約20人の受講生たちと一緒に、古い長屋を3泊4日でDIY断熱改修しました。そして2015年2〜3月には、「グリーンズの学校」で「みかんぐみ竹内さん、パッシブハウス・ジャパン森みわさんと学ぶエコハウスDIYクラス」も開講。丸一日使って、古い銭湯をDIYエコ改修しました。 どちらも限られた時間と予算での断熱改修でしたが、果たしてその結果は……? 今回の対談は、そんな話から始まりました。

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草サッカーでもいいじゃない!

竹内:最初はちょっと心配だったの、「わかってくれるかな」って。でも実際やってみると、寒さに対する効果があれだけハッキリ表れて、実感としてみんなにシェアしてもらえるというのは、すごいなと思いましたね。
ぼくらが普段考えているエコハウスがF1だとすると「カローラをちょっとチューンナップした」くらいのレベルなんだけど。

菜央:でも元がリヤカーだったから、「リヤカーにエンジンがついた」くらいの違いがありましたよね。

竹内:ああ、「自転車がホンダ・カブになった」みたいな。

菜央:北九州では初日はダウンジャケットを来て作業していたのに、2日目はトレーナーで、3日目はTシャツでしたからね。

菜衣子:私たちも山形エコハウスに行ってから、すごいなと思って。体感するって重要ですよね。しかもエコハウスDIYの総予算は……

菜央:北九州は全体で80万円、断熱をした2階だけで30万円くらい。

竹内:(断熱材として使った毛糸クズなどを無料で)いろいろ、もらったからね。

菜央:グリーンズの学校では全部で8万円。窓は30枚。しかもほとんどホームセンターで買える材料しか使わなかった。
1日目に、「エコハウスの最高峰を体験しよう」ということで、森みわさんの鎌倉のパッシブハウスにお邪魔したんですよ。2月下旬の寒い日だったのに、ドアを開けたらいきなりご家族がTシャツで出てきて、みんな度肝を抜かれて。

室内もまるで高級車に乗っているような、包まれている感があって「これが気持ちいいということか!」みたいな。でもその時はそれが、どれだけすごいことか全然わからないわけですよ。その後、森さんの講義を聞いて初めて「これは“ブンデスリーガ“だったんだ!」みたいな。でも1日目が終わって、みんな若干「すばらしいし、いつかできるといいけど、俺にはこんなの無理」みたいな感じになったの(笑)。

竹内:諦め感がただようんだよね(笑)

ブンデスリーガ…ドイツのプロサッカーリーグ

 

菜央:そこで2日目に竹内さんが「たしかにすごかったけど、別にブンデスリーガじゃなくてもよくない?」みたいな話をしてくれたんですよ。「セリエAとかJリーグとか高校選手権とか草サッカー大会とかフットサルとか、サッカーにもいろいろあるよね」「目指すは草サッカー大会で、とりあえず試合になるところを目指しましょう」と。

竹内:ブンデスリーガのサッカーを見ながらまずは概念を把握してもらった上でサッカーをやると、自分はそこまでうまくはいかないんだけど、すごく楽しい。その「すごく楽しい」が大事なのかなって。

菜央:リノベ―ションスクールでDIYした北九州の長屋もグリーンズの学校でDIYした銭湯シェアハウスも、元が隙間だらけなのね。窓際が寒くてしょうがない。壁はペラペラ。でも、まったく試合にならない烏合の衆から、草サッカーの試合がやれるようなレベルまで引き上げるだけで、激変するんだよね。

それに自分でやってみると「自力では草サッカーで点が入れられるところまでしかいけないんだ」ということもよくわかる。そこから先はプロの領域。そうやってリテラシーが上がると、逆に安心してプロにお金が払える。

竹内:みんなこれまで「断熱改修ってすごくお金がかかるものなんだ」と諦めていたところがあった。やっぱりプロがやると、数百万円前後しちゃうわけですよ。なかなか手が届きづらい。でも80万円とか8万円とか桁が違ってくると、「いよいよ来たぞ」という感じはありますね。

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「誰かと一緒に楽しくやる」のが大事

竹内:あと、みんなでやるのはすごく大事。独りでやると心が折れると思う。

菜衣子:私たちもDIY鬱になったことあります。誰か一人でもいいから他人がいないとダメ。

竹内:北九州の時にみんなで言っていたのはDIY(Do It Yourself)じゃなくてDIT(Do It Together)ということ。受講生たちは、今でも誰かのところを改装するたびに集まってみんなでつくって、夕方からは飲んで。楽しそうですよ。だからやっぱり家を直すことじゃなくて、関係をつくること。DIYによってコミュニケーションが盛んになっていくということが前提にあると、単なる家じゃなくて、人と人との関係性の話になる。

菜衣子:うちも「自分の塗った漆喰を見たい」って、刺し身とビールを持って遊びに来る人とかいますよ。

菜央:YADOKARIの小屋部もそうだし、みんなでつくるコミュニティの在り方というのが、これからどんどん広がっていくだろうね。

ジョニー:自分たちで全部やろうとしたときに、ストイックになりすぎちゃうとDIYが「つらい」とか「難しい」ものになっていっちゃう。そこをみんなでやると楽しくなる、ってすごく大事だよね。

菜央:たとえば独りで窓の断熱をやろうとして、釘をカンカン打ってたら木がバリって割れちゃって、また寸法を測って木を切るところからやり直さないといけなくなっちゃった。そういう時って、ひとりだと「はぁ…(ため息)」ってなるんだけど、隣に友だちがいると「うわー、割れちゃったアハハ」って、その瞬間に笑い話になる。

DIYはエンターテイメントの自給!?

菜央:みんなでやると、失敗できるんだよね。友達の家で一回失敗しておくと、自分の家でやるときには解像度が高くなってる(笑)。「こうやればうまくいくのか」とか「道具ってそうやって使うんだ」とか、そこにいるだけですごく立体的な学びになる。お金を払ってエンターテイメントに行くのも楽しいけど、人が集まってみんなで何かをつくること。その過程で起きた失敗や学びを共有できて、しかも出来上がったもので喜んでくれる人がいる。最高のエンターテイメントだよね。

菜衣子:エンタメの自給ね。

菜央:「これで俺、明日から生きていけるわ!」みたいな感覚で映画館を出る経験って、あまりないと思うのね。でもみんなでDIYすると、そういう感覚になれる。しかもお金かからないし、実際的だし。最高だなって。

ジョニー:ポートランドに行った時、ぼくはアメリカってエンターテイメント大国だとばかり思っていたんだけど、日本にありふれているカラオケボックスとかゲームセンターとか安い映画館とか、いわゆるエンターテイメント産業やレジャー産業が全然、見当たらなかった。まちの人たちは庭で本を読んだり、ちょっと時間ができたら湖まで行ってきたり、自分たちの楽しみまで自給自足しているというのを目の当たりにして。日本では何かしようと思った時に、用意されたものを買わなくちゃいけない。でも自分たちで暮らしを組み立て始めるとそれ自体が楽しくなって、暮らしそのものがエンターテイメントになっていく。

竹内:すごく大事なのは「自分の頭で考える」ということや、「これをやったら、こうなるよ」という実感。「自分でやれるんだ」となると、応用が効くんですよね。その応用と学びが連鎖していくといいな、って。

菜央:その感覚って、この先も一生使える。この前学んだことと今日学んだことを組み合わせたらこんなことができるんだ、という発見がある。友達や家族に伝えていけば、彼らもよりよく生きていくことができるし。充実感が全く違うんだよね。

菜衣子:この前、なぜ自給をするのか、という話をしていて。友だちが「技術は盗まれないからね」って。家は災害があればなくなってしまうこともあるし、お金は使えばなくなってしまうけど、自分の身についた技術は誰にも盗めないしなくならない。だから「貯めるならお金じゃなくて技術なんじゃないか」って。

菜央:自給自足やDIYが日常風景になった世界って、まるきり違うんだよね。一般的に行われているようなマーケティング、商品、サービスみたいなものを見る目もまるきり変わってくるし、お金の使い方もまったく変わってくる。

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おまかせ社会にさよなら

菜央:家って、人生のコストの3分の1がかかっているわけじゃない? その領域が完全に自分の手から離れて、ブラックボックスになってる。それが「自分で暮らしをつくっている」という感じが持てない最大の理由。しかも住まいって、自分がいちばん長い時間を過ごす場所。その一部でも自分の手で直せたり、つくれたり、工夫できたりすると、がぜん人生が変わってくる。

菜衣子:これまで人生の3分の1は「どうにもならないもの」として、放置してたんだよね。

竹内:そう。お金を払わないと得られないもの。

菜衣子:お金を払っても、寒い。

竹内:「寒い」と思ってさえいない、というところに実は問題がある。人間ってすごく順応性が高いので、「これが普通だよ」と言われ続けると「こういうものなんだな」って慣れちゃう。みんな忙しいから、なかなか自分の生活について考える時間もない。

でも人間って、生きている時間の80〜90%は何かしら建物の中にいるんですよ。その空間にどうやって関わっていくのか。「家ってもっと、どうにかならないといけない」というのが、成熟した社会では大事な考え方じゃないかな。

菜央:一言でいえば、これまでは「おまかせ社会」だったんだよね。建築のことは建築家、建てるのは大工さん、エネルギーのことは大手の電力会社におまかせ。制度とか政治も政治家におまかせ。リテラシーもないから、プロセスをチェックしようもない。ひとたび問題が起きると、大手のメディアが書き立てることを鵜呑みにしてみんなでバッシングする。そういうおまかせ体制の中で、専門家も一般の人たちに対して「彼らはわからない」という扱いをしてきたと思う。

でも暮らしをつくるのは、ぼくたち一人ひとり。そこから出発すると、エネルギーでいえば藤野電力みたいな活動が出てくる。ほんのちょっとでも「エネルギーって、つくれるんだ!」という大転換が起きて。「なんだ、発電所ってこういうことか。これを何百万倍も大きくしたのがあれ(電力会社)か」っていうところからエネルギーのことを考えるのと、完全に「おまかせ」の状態で考えるのとでは、まったく意識が違う。

菜衣子:自分でやると、より楽しめるようになるよね。自分でやっていなかったら、たぶんパッシブハウスに行っても面白くないと思う。「あー、快適」と思うだけで。

菜央:ガンジーの「be the change that you want to see」って言葉があるじゃない。make the changeじゃなくてbe the changeなんだよね。自分が変化そのものになることが、変化を起こすために一番有効な方法。だから自分がやること、態度、考え方が社会をつくるんだ、俺の家は俺がつくれるし、まちの風景はぼくたちがつくれるんだ、その総和が社会なんだ。そういう感覚を持っていると、その人のまわりで変化がどんどん起きていく。それがDIYのパワーであり、面白いところだよね。

(後編へつづく)

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