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〈前編〉小さく暮らすと、豊かさのものさしが変わる / 暮らしかた冒険家 presents OFF-GRID LIFE

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crosstalk
2015.01.29

暮らしかた冒険家 meets

volume 6トレーラーハウス、そのタイニーな暮らしの実験

  • Text石神 夏希
  • Photo伊藤 菜衣子

〈前編〉小さく暮らすと、豊かさのものさしが変わる

千葉県いすみ市。畑に囲まれたのどかな田舎道を進むと、林の向こうに可愛らしいトレーラーハウスの姿が見えてきます。greenz.jp 編集長であり、わたしたち電力の言い出しっぺでもある鈴木菜央さんの自宅です。敷地内には菜央さんの書斎になっている可愛らしい小屋も。 新年早々この家を訪ねたのは、生まれたばかりの長男・墾くんを連れた暮らしかた冒険家のふたり。2014年7月末に家を設置し、9月に引っ越して約4ヶ月。トレーラーハウスで暮らし始めて、何がよかった? 何が変わった?そんなリアルな疑問をぶつけました。 トレーラーハウスでのオフグリッド生活、どうっすか?
菜央さんちの日常風景

東京から電車で2時間、千葉のローカルに突如現れた”トレーラーハウス”… いったいどんな暮らしぶりなのか!?greenz編集長、鈴木菜央さんの自宅をみてきました。

ズバリ、せまくない?

菜央さん一家は、菜央さん・妻のともみさん・小学生のにこちゃん(10歳)みりちゃん(8歳)の4人家族。昨年夏まで住んでいたのは同市内にある、150平米の2階建てログハウスでした。それに引きかえ現在のトレーラーハウスは約35㎡、ロフトを入れても50㎡ほど。実に1/3〜1/4までスケールダウンしたことになります。

妻のともみさん

子供部屋

屋根裏が子供部屋に。菜央さんちには二人の小学生の娘さんがいます。子どもたちの楽しそうな笑顔が印象的でした。子供の成長とともに、家がどうなっていくのかも気になりますね。

1階にリビング・ダイニング、キッチン、寝室、トイレ、浴室。2階(ロフト)には屋根裏部屋のように天井の低い子ども部屋と、今は納戸のように使っている空間があります。たしかに狭い!…でも、どうしてこんなにわくわくしちゃうのでしょうか。

菜央:子どもたちは超楽しそうだよ。友だちが来た時は、秘密基地みたいにして遊んでる。

ここに布団を敷いてゲストルームとしても使っているんだけど、お客さんが“すごく落ち着く”って一番気に入る部屋なんだよね。静かに本でも読みたくなるって。

寝室にはベッドと衣装棚。ベッドはダブル+シングルをつなげて4人で寝ています。水回りは、バス・トイレ別。脱衣所にはドラム式洗濯機が置いてあり、やや広めのアパートくらいの感じ。

寝室

引越し当日に寝室のペンキを塗る・塗らないで揉めたという鈴木夫妻… たしかに荷物が入ってからではペンキは塗りづらい。かといって完成しないと寝れない…リノベーションは段取りも重要だということを学びました。

トイレ

いたって普通の水洗トイレ。ここが”車”の中だとは言われないと気づきません。左手前が階段下の収納になっているのはタイニーハウスならでは。

リビングのテーブルやソファは、大きな家に住んでいた頃のものばかりなので、この家にはちょっと大きめ。この配置に落ち着くまで、何度も模様替えをしたそうです。ロフトの柵に小さな鏡を並べて、部屋が広く見せる工夫をしているのがユニーク。

奥様いわく「平日に家族全員がいると、ときどき狭く感じる」程度で、普段は快適に暮らせているようですが、困っていることはあるのでしょうか?

リビングと菜央さん

リビングのソファに腰掛ける菜央さん。壁には友人が描いた絵が飾ってあります。その上には屋根裏の収納部屋が。鏡を貼ることで室内を広く見せる効果が。ちなみに鏡はIKEA製。

キッチン

キッチンからリビングを眺めて。キッチンはワンルームマンションのようなガスコンロが2口と流し台。そして奥には電源の入っていない冷蔵庫。炊飯も土鍋で。オフグリッドな厨房でトライアル生活中。

菜央:前の家と違って、キッチンが狭いから洗い物を片付けないと次の料理が作れない。段取りが必要になった。あとお客さんが来た時に、物をどこかに寄せて布をかけて隠す、みたいなことはできない。でも前の家は、お客さんが来るとなると掃除に6〜7時間もかかっていたから、そこは楽になったね。

既成品の家具は(サイズが合わなくて)全部ダメ。でも工夫をし続ければ、これからどんどん快適になると思う。

最初の頃はお客さんが呼びにくかったけど、それも解消されてきた。もうじき完成する小屋にはロフトと、1階にハンモックをつけるから一家族は泊まれる。昔みたいに最大4家族が同時に泊まりに来たりはできなくなったけど、その代わり一家族ごととじっくり話すようになったね。

なおさんの部屋というか小屋

YADOKARIと一緒につくったなおさんの仕事部屋、というか小屋。小屋の電力はオフグリッド達成!

小さな家で暮らすことで、家族にも変化が。

菜央:家族が一緒に過ごすようになった。前は別々の部屋で勝手に過ごしていたけど、今はみんなリビングにいる。

子どもの成長段階にもよるんだよね。高校生とかになったらさすがに狭いだろうから、一人一小屋、自分で作ってもらう(笑)。でも子どもが進学して東京に出て行ったりしたら、夫婦ふたりには本当にこの広さで十分だよね。

食卓

前の家から持ってきた食卓と椅子。家が手狭になったので、大きく感じるという。そう、規格品だとなかなかジャストな家具がないのだとか。タイニーな暮らしが広がれば、プロダクトもでてくるのかも。

秘密基地で育ち、大きくなったら自分の小屋を建てる!なんて楽しそうな子供時代でしょうか。

タイニーハウスの狭さは、イコール不自由や我慢ではありません。豊かさや楽しさの“ものさし”を変えることなのですね。

何が必要なくなった?

菜央さんがトレーラーハウスに関心を持ったきっかけは、近年アメリカから広がりつつあるタイニーハウス・ムーブメント。リーマン・ショック以降、大量生産・大量消費社会に対するカウンターカルチャーとして、なるべくモノを所有せずシンプルに暮らす「タイニーハウス」という暮らし方が注目され始めたのです。

「断捨離はしたけど、あと3回くらい必要」という菜央さん。洋服はほぼ半分ほど処分し、1500冊ほどあった本も400冊まで減らしました。

菜央:手元に置いて、何度も繰り返し読みたいような本って、実はせいぜい200〜300冊くらい。今も本は職業柄たくさん買うけど、Kindleで買ったり、一回読んだら誰かに回すようにしてる。

捨てられなくて困っているのは、おじいちゃんのカメラとかかな。カメラ自体はたいしたものではないんだけどね。

タイニーな暮らしで、電気を使う量も減りました。以前は当たり前に使っていた家電のいくつかも、本当に必要なのか見直す中で使用をやめたそう。びっくりするのは、冷蔵庫を使っていないこと!

キッチン周り

だいぶ断捨離したキッチン周り。なかでも薪ストーブや焚き火で使えるダッチオーブンはかなり出番が多いそう。タイニーな暮らしでは、必然的に「どんなものを残したのか」、必然的にその人のセンスがでてきます。

菜央:以前持っていたのが大きすぎたから、友達の小さいものと交換してもらったの。“ダウンサイズわらしべ”だよね(笑)。

だけど音が気になって、夜間はタイマーをつけてON/OFFを切り替えているうち“なくてもいいんじゃない?”ということになって、やめてみたら意外と大丈夫で。今は電源を切って、ただの食料保管庫になってる。

野菜も卵も常温で問題なし、魚や肉は食べきれる分だけ買ってくる。ビールは外に出しておけば冷たいし、牛乳を飲みたい時は500mlを買ってきて飲み切っているそう。

ごはんは土鍋で炊き、炊飯器はお客さんが大勢来た時や「何かがあった時のために」待機させています。

菜央:あと電子レンジは全然、要らなかったね。コーヒーをもう一度温めなおすときに使っていたけど、小さな鍋で全然できた。

今でも使うのはジュースを作るミキサーとパン焼き器。が、パンも最近はダッチオーブンで焼くようになったので、もうじき不要になる可能性大。

タイマー

なんと冷蔵庫はタイマーでON/OFFしていた!…が、そもそも冷蔵庫いらないよねと気づいていまは冷蔵庫=単なる収納庫になっている鈴木家。たべものとの関わり方も変わりました。

ジューサー

アンティークのジューサーと常温でOKな果物や野菜。置いてあるものに主人の暮らしへの愛着を感じます。オフグリッドした先に、その人の個性が光ります。

リビングの家電は、iPhoneにつなげる直流電源のスピーカー。そしてWi-Fi、アンドロイドタブレット、iPad、Kindleなどのガジェット類。

テレビもやめました。結果、子どもたちの間を持たせるために“テレビで解決しちゃう”ことがなくなったそう。

電話はありますが、電源は接続していません。何でも「電話線から電気が来てるから、電源を入れていなくても鳴る」のだとか! ちなみにディスプレイ等は使えません。

エアコンはあまり使いませんが、冬は温かい空気を1階に下ろすためのサーキュレーターが活躍しています。ただし夏は暑そう。

シンプルなサウンドシステム

iPhoneに繋げられるアンプ。サウンドシステムはこれとスピーカーさえあれば十分いい音がでるのだそう。もちろんソーラーの音です。

菜央:だから今年の夏までに、庭に面した窓にデッキと屋根をつくる予定。夏は日差しを避けて、冬は日射があるように角度を計算して。それから屋根の上にソーラーパネルを乗せれば、屋根の熱吸収が減るから、暑さがやわらぐはず。

以前住んでいたログハウスは広かったから暖房代もかかるし、家が大きいと物が増えちゃって、4年間でぶくぶくと暮らしが膨れ上がって。

ここに住んで、物欲がなくなったのが楽ちん。一個しか買えないからめちゃめちゃ吟味するし、一個しか買わないから高くてもいいものが買える。

車は2台必要だけれど、せめて1台は軽自動車にしたい、という菜央さん。メタボな暮らしを脱却し、本当に必要なものを絞り込んだシンプルな暮らしへ。家の大きさだけでなく、暮らしにまつわるあらゆるものをスケールダウンしているのです。

“お客さん”をやめて、暮らしのつくり手になる

トレーラーハウスの前に4年間住んでいた家はロケーションにも恵まれ、とても魅力的な家でした。一方で断熱が十分で無かったり、お風呂が一般的な仕様ではなく寒かったりといった悩みもありました。ところが賃貸なので、自由に手を入れることができません。家賃も12万円と、周辺相場(高くても8万円、平均で5万円、安くて3万円。うまくすれば1〜2万円)と比べるとかなり高めでした。

鈴木菜央さん

ワークスタイルも東京の比重を下げていく決断をした菜央さん。オフグリッドな生活では、時間の使い方が問われます。

菜央:外から来た“お客さん”をやめたくて東京から引っ越してきたのに、暮らしのつくり手になれていなかった。自分で思ったようにどんどん手を入れていく暮らしをしたいなと思って。

とはいえ、広い家を自分の好きなように変えていくのは大変だし、お金も時間もかかります。一方、タイニーハウスのよさのひとつは「自分の好きなように手を入れやすい」こと。

菜央:内装を変えて断熱をちゃんとして庭にも手を入れたら、いずれ貸すこともできるし、もう一回売ることもできる。建てたら改築か解体しかないけど、家自体を運べるから、千葉・東京・埼玉の3県くらいが一気にマーケットになる。

それと、中古車と一緒でリセール・バリュー(再販価格)が下がりにくい。普通の家は10年経ったら土地とセットじゃないと売れないけど、これだったら上モノだけでも売れるんだよね。

ちなみに新車時に900万円で、友人である以前の住人が6年間住んだ後に菜央さんが500万円で購入。お友達は400万円で6年間住んだ計算になります。

トレーラーハウスはカーローンしか組めないので、税制により優遇されている住宅ローンより金利が高め。それでも家賃(ローンの支払い)は月々11万円で、4年間で完済予定。75坪の敷地は150万円で購入しました。

菜央:盲点だったのは、カーローンは本体にしか適用されないこと。土地代、工事代、移動、整地、設置の350万円はローンが組めないので現金払い。支払いが大変だった。

野菜を育てる

野菜をプランターで育てています。畑はこれから。普通のコンポストのほかに、ミミズのコンポストにも挑戦中。菜央さんの周りにはいろいろな先生がいます。

ところで一口に「タイニーハウス」と言っても、コンテナやキットハウスなどさまざまな選択肢がある中で、なぜトレーラーハウスを選んだのでしょう?

菜央:セルフビルドにも興味があるけど、僕の場合は仕事が忙しくてつくる時間が取れない。かと言って、誰かに建ててもらうほどお金があるわけじゃない。

でも一番の理由は、このエリアに住み続けたかったこと。いい人たちがいっぱいいて、自然もあって、移住者に対しても寛容。

この家が土地も入れて総額800万円だから、同じくらいの金額で手直しすれば住める家付きの土地はある。でもたまたまこのエリアでは、そういう物件が見つからなかったんだよね。だけどトレーラーハウスなら、新築で建てなくてもここに住めるなって。

外観

空き地に小屋とトレーラーハウスが。土地さえあれば、どうにでもなる。地方での暮らしかたの実験として非常におもしろいですね、菜央さん!

当時、海外のトレーラーハウスの動画などを見ては、妄想を膨らませていたという菜央さん。Twitterでつぶやいたところ、千葉の九十九里浜でトレーラーハウスに住む友人から「俺の家、売りに出すけど見に来る?」という返信が。奥さんと“とりあえず見に行くだけ行ってみよう”と出かけたはずが、実際に見てみると “意外とありかも”になっていました。

菜央:だって、面白いじゃん。何千万円もかけた一生に一度の買い物ってわけではなくて、4年間がんばって働けば買える。だったら面白い生き方をしたいなと思って。

まあ、ギャグだよね。一世一代のギャグ。“そう来たか!”ってみんなに言われたい、みたいな(笑)。でも打算的な部分もあって、電気代とか支出が下がるだろうな、という計算もあった。

その計算通り、電気代は以前の1万前後から、3千円〜4千円へ減少。水道代は5千円前後が2千円に。ガス代・電気代を合わせれば、年間で15万円ほど下がる見込み。灯油の使用量も劇的に減ったというから、家を小さくすることがかなりのコスト減、エネルギー使用量減になることがわかります。暮らし全体で、電気を使う量を減らすこと。それがまずは、オフグリッド・ライフへの第一歩だと、菜央さんはいいます。

後編へつづく