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第四回|「昔ながらの暮らし」ではなく「今よりかっこいい暮らし」 / 暮らしかた冒険家 presents OFF-GRID LIFE

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crosstalk
2014.08.18

暮らしかた冒険家 meets

volume 1竹内昌義×森みわ 「ガマンしない」に貪欲な家

  • Text石神 夏希
  • Photo池田 秀紀

第四回|「昔ながらの暮らし」ではなく「今よりかっこいい暮らし」

オフグリッドの暮らしに挑戦している「暮らしかた冒険家」が、『図解 エコハウス』の著書である建築家の竹内昌義さん(みかんぐみ)と森みわさん(KEY ARCHITECTS/一般社団法人パッシブハウス・ジャパン)を訪ね、エコハウスやパッシブハウスについてお話を伺います。 総電力の34%を占めると言われる住宅の冷暖房。家を見つめ直すことで、見えてくる、エネルギーのこと、社会のこと、暮らしのこと。さまざまな視点から、「ガマンしない」に貪欲な家のヒントを探します。
全八回に渡る「「ガマンしない」に貪欲な家」をめぐる対談。第四回は、いよいよ、竹内さん、森さん、お二方の建築家としてエネルギーや家、そして暮らしと向き合って導き出された答えが伺えます。さらにそこから浮かび上がる問題提議も。お二人の「かっこいい暮らし」談義、ぜひご覧下さい。

「昔ながらの暮らし」ではなく、「今よりかっこいい暮らし」

「電気を使わない暮らし」と聞くと、一般的にはまだまだ、「何かをがまんすること」だと思われがちです。またいち早く実践している人たちほど、時として“欲しがりません勝つまでは”式のストイックな姿勢や、昔ながらの暮らしを善とする懐古主義に陥ってしまいがちなのも事実。

森:それをやめたいんです。昔に戻っていくような暮らし方というのは、絶対に一部の人にしか受け入れられない。そうではなくて、今よりかっこよくなっていかないと。

電気を手放したら、もっと楽しく、もっと気持ちいい。そんな「電力を使わない暮らし」でなければ、多くの人がやりたくなるものにはなりません。そして多くの人が自分からやりたくなるようなことでなければ、社会を変えることはできないのです。

『図解 エコハウス』でも最新事例として紹介されている、オーストラリアのMorscher邸。「魔法瓶」のイメージをくつがえす開放感(写真:Morscher Bau- & Projektmanagement GmbH)

『図解 エコハウス』でも最新事例として紹介されている、オーストラリアのMorscher邸。「魔法瓶」のイメージをくつがえす開放感(写真:Morscher Bau- & Projektmanagement GmbH)

竹内:がまんをしようという話ではなくて、「かっこいい生き方ってなんだろう」ということ。今はもう、エネルギーを使わないのがかっこいいという価値観になってきていますよね。エネルギーを無駄使いしてるの、かっこ悪いじゃん、って。おそらくそのベースには、大上段に構えてエネルギー問題を議論しても、そう簡単に変わらないという実感があると思う。
そういうマインドがまずあった上で、僕ら専門家は「それ、技術で解決できるよ」と具体的に示していかないといけないと思います。

いま日本でエコハウス/パッシブハウスをつくろうとすれば、改修の場合も含め、建築家の手を借りるケースが多いでしょう。低コスト・大量生産のため規格化が必要なハウスメーカーにとっては、フルオーダーの省エネ設計は「一番面倒くさくてやりたがらないこと」。
一方、建築家の手がける注文住宅は、施主や土地に合わせてゼロからフルオーダーで設計することが当たり前。ひとつひとつ異なる解が求められるエコハウス/パッシブハウスとは、相性がいいのです。

竹内:ところが日本の建築家はエネルギーの話が嫌いなんです。高気密・高断熱の家に対する心のバリアがすごく高い。
山形エコハウスをやって、(デザインと性能との両立は)そんなに難しいことじゃないとわかった。でもそれを嫌がる建築家がたくさんいる。デザインの制限になるという思い込みが強くて。

森:省エネというパラメータが1つ増えただけであって、コストや構造や設備といった、何とかしなければならないものとデザインを融合させていくという、これまでやってきたことと一緒なんです。建築家にとっては、パッシブハウスの方程式は強い武器になり得るはずなんですよ。

日本では、住宅のプロである建築家にとっても、まだ広く受容されているとはいえないエコハウス/パッシブハウス。実現するには、私たち消費者自身も賢くなる必要があるようです。

竹内:やはり、正しい知識を勉強すること。また、それを理解してくれる建築家を探すことです。
実は家の知識は、中学校の理科の授業のレベルと、実感でわかることばかりで、素人でも難しいことではないと思います。そうやって勉強していくと、いい加減なこと、不確かなことがわかるようになります。そうすればきっと、いい建築家が見つかりますよ。

森:“庇を付けてほしい”とか、“トリプルサッシが欲しい”といった、デザインの「足かせ」と捉えられがちな要求を出すのはやめましょう。むしろ“省エネの性能数値が伴っていればデザインはお任せする”、“省エネ化の手法は問わない”、“設備に依存するような省エネではなく、あくまでも建築躯体で対応して欲しい”など、建築家に自由度を与えるスタンスで要求を伝えれば、建築家も重い腰を上げて考え始めるのではないでしょうか?

また、その断熱性・気密性の高さから、「魔法瓶」と揶揄されることもあるエコハウス/パッシブハウス。風通しや日当たりが悪いのでは?と思っている人もいるでしょう。吉田兼好が『徒然草』で「家のつくりやうは、夏をむねとすべし」と表現したような、風通しのよい昔ながらの日本家屋。それこそ「日本の気候に合った家なのだ」という意見も、しばしば聞かれます。

奈良県橿原市にある、木灯館(ことぼしかん、2012)。日本の伝統的な土壁+竹小舞の壁をパッシブハウスレベルの高断熱・高気密仕様に進化させたもので、森さん曰く「古民家のリフォームの解となり得る」。(写真:KEY ARCHITECTS)

奈良県橿原市にある、木灯館(ことぼしかん、2012)。日本の伝統的な土壁+竹小舞の壁をパッシブハウスレベルの高断熱・高気密仕様に進化させたもので、森さん曰く「古民家のリフォームの解となり得る」。(写真:KEY ARCHITECTS)

森:昔ながらの日本家屋は、高温多湿な夏に大切な木造の躯体が腐らないよう通風を優先したものでした。その代わり、昔の人は冬の寒さをがまんしていた。私の出会ったドイツのパッシブハウスは、日本の昔ながらの家の考え方に、断熱気密構造を足し合わせたものだったんです。だから、日本でもきっと受け入れられると思いました。

竹内:魔法瓶だけではなくて、風通しも日当たりもいい。両立可能なことを知らない人が多いだけなんですよね。

現代社会が忘れていた知恵と、近未来をつくる最新技術と。両方のハイブリッド、つまり“おいしいとこどり”が、エコハウス/パッシブハウスの真骨頂なのです。

つづく